物流のはじまり

物流の歴史を簡単に見てみましょう。日本の物流のはじまりは、1万数千年前の旧石器時代と言われています。火山岩の一種である黒曜石は、ナイフや矢じり、槍の穂先などの石器として使用されていました。黒曜石の産地は限られており、産地から数百キロ離れたところや海を隔てた島で石器として見つかっています。このことから、旧石器時代に何らかの交易があり、物流があったと考えられています。縄文時代に入ると、黒曜石・軽石・翡翠・干し貝・塩などの交易が始まります。

物流として、船を使った交易が、1世紀の弥生時代には、はやくも中国との間で始まったようです。有名な魏志倭人伝の金印や卑弥呼の鏡が中国から入ってきています。古墳などから中国製の物品が出土しています。6世紀には、遣隋使や遣唐使が送られます。遣隋使や遣唐使の目的の一つは、中国から物品を輸入することです。遣隋使が海運業のはじまりだったとも言われています。816年には船着場に当たる船瀬が完成したという史料があります。既に船舶による物流が発達していたと思われます。

物流の陸送では、馬が活躍していたものと思われます。646年の大化の改新の詔に、駅馬・伝馬を置くと記載されています。馬を使った運輸や郵便と思われます。701年に駅伝制が定められています。9世紀には、「しゅう馬の党」という馬による運送業者が活動を開始しています。また、927年に完成した延喜式には、交通・運輸について、詳細に記述されていたと言われています。

物流は、11世紀に入ると、馬借・車借という陸送の運送業者が登場しています。人力での輸送、動物(馬)を使用した輸送に次いで、車(車輪)を利用した輸送が史料に出てきています。車はもっと早くから利用されていた可能性もあります。また、「馬借・車借の妻たらんと願う」などと書かれた資料もあり、馬借・車借は女性の憧れの職業だったと推測されます。

物流は、12世紀に入ると海運業者である廻船(貨物船)も登場しています。さらに輸送だけでなく、問丸という、後に問屋に発展する倉庫・運送・委託販売を営む業者も登場しています。問丸は、年貢米の輸送管理を行い、当初、領主に隷属していたものが、仲介業者や運送業者として独立・発展していきます。